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良い商品とは


こちらでは縫製工場から見た良い商品の条件を解説致します。
あまり専門的に解説すると理解しにくい部分が出てきますので(工場自らの立場を追いこむ恐れもありますw)、出来るだけわかりやすくまとめてみました。

良い商品とは何か、これは人によりさまざまだと思います。
デザイン、流行、値段、色柄等 こだわりを持つところは各人それぞれですが、縫製工場からみた場合の”良い商品”の条件といたしまして、

1.良い素材
2.良いパターン(デザイン)
3.良い縫製
4.コストパフォーマンス


の4つがあげられます。具体的に申しますと、

1. 素材に関しましては、本当にその価値を見分けられるのはプロの方だけだと思いますが、簡単に見分ける方法は”手触り”です。触ってみて良い感触のものは概ね良いものだと考えていいと思います。ただし、高価な素材ほど耐久性がない(たとえばカシミヤなど)傾向がありますので、目的に応じてチョイスする必要があります。
このところ増えてきましたのが、イタリアを初めとするヨーロッパからの輸入素材と 中国製の素材です。国産よりも安上がりで、独特の風合いの物が多い為、商品によっては目を引くものもあります。
以前は風合いは良いけど耐久性が低そうなものが多かったですが 最近はかなり良くなったようで国産の生地より多く使われているようです。
ウールの場合は湿度により伸び縮みしますが 海外製生地のなかにはそういうことを余り考慮していないようなものもあり(日本ほど湿度が高いところは少ないようです) 雨の日に伸びてビリビリとパッカリングがでることもありますので 海外製のスーツは湿度の高いときに見られると良いでしょう。
普通は薬品や接着で固めてそういうのがでないようにしていることが多いですね。
総じて言えば 国産の一流メーカーの生地の方が安定しているように感じます。

商品アピールで 縫製の仕様であれも付いています、こんな風に高級仕立ですと言うような事を売りにしているものがあります。その様なものには素材の悪さを仕様でごまかしている傾向がありますのでご注意下さい。
残念ながら素材の良し悪しは価格に反映されることが多いため、例外はございますが、安い商品には良い素材はあまり使われていないことが多いと思います。

2. パターン(デザイン)はそれぞれの体型や趣味嗜好に合う・合わないと言う事は別にして、特にボトムの場合立体裁断ですので、たたんで置いた状態で腰まわりが妙に綺麗に見えるのは着用した場合あまりフィットしないものが多いです。着用して綺麗に見えるのはたたんだ状態では多少しわが出ます。

また、タイトなシルエットのものは 素材にもよりますが、特にウールの場合縫製前にある程度蒸気を当てて伸ばしたりいせ込んだり(くせ取りと言います)しないと綺麗に加工できないものがあります。パターンでもくせ取りを前提に作ってあるものもあるのですが、最近はそこまで考えて縫製していないものが多いです。着用するとわかりますが必要以上に窮屈感を感じてしまいますし、シルエットもおかしくなります。逆にルーズフィットの物はあまりくせ取りの必要はありませんので、その差は解りにくいと思います。

パターンは素材によって微調整しないといけないのですが、最近はコストダウンの為か 気にせず同じパターンでウールでもコットンでも作ってしまうところが増えてきています。これは縫製工場泣かせなので、その対応にはかなりの経験とスキルを要求されます。
なぜこういうことになるかと言いますと 実は最近のメーカーにはちゃんとした技術者はいなくなってきており その代わりを工場が担うことが増えてきています。日本の縫製の技術は それに関わる人の減少に比例してどんどん失われつつあるのです。現在技術者のいるところも高齢化も進んでいますので あと10年位でレッドブックに載るかも知れません。

3. 縫製と言うのはただ布地を1:1で合わせて縫うものではなく、少し長さの違うものを微調整しながら縫う部分が多くを占めます。素材によってその加減を見極める技術がないと、外観がスッキリと仕上がりません。なんとなく野暮ったく見えたりするのは加工する側のセンスの問題だけではなく、技術の問題でもあるのです。

海外製品(特に中国・東南アジア製)の多くはそう言う不具合部分をなんと薬品でごまかしています。クリーニングすると形が崩れてしまう事が多いのは粗悪な素材を使っているせいもありますが、薬品が取れてしまってボロがでてしまっていることも多いです。中国や東南アジアの製品はとても縫製しやすい素材を使っていますが(難素材は殆ど国内製です。海外ではまだ難しいです)それでも薬品を多用しているものが多いです。ちなみに弊社ではその類の薬品は一切使用しておりません。素材に応じた縫製ができる工場には必要ないのです。
縫製の良し悪しの見分け方に関しましては書き出せばキリがないのですが、一般の方でも簡単に見分ける方法として、スラックスの場合ベルト部分を持ってファスナー部を手前にしてぶら下げると良くわかります。一番難しいのはファスナーの下端部付近の収め方で、ここが内部も含めてすっきり仕上がっていれば縫製のスキルがかなり高いという事です。さらに、フロントのセンターラインがベルトから裾までスッキリと落ちていて、左右の足が”気を付け”状態になっていればまず裁断も縫製も良いものです。片足が前にでたり、足がねじれるようになるものは、お避け下さい。ただし、デニムなど徐々に一方方向にねじれていくような例外的な素材もあります。

ミシン目の粗い商品もお薦めしません。スピードを上げて数を縫う為に縫製が粗くなっています。目安は3cm間で13針です。
海外製品でもヨーロッパ・アメリカ製の一流ブランド品も、そのブランドイメージの割には縫製のスキル自体はあまり高くないと思います。洋服に必要以上の品質を要求しない国民性なのかもしれませんが、お粗末なものもかなり見かけます。
前掲しましたが 特にウール製品の場合それぞれの国の湿度の違いから、ヨーロッパ製の製品は日本では見栄えが悪くなることがあります。(湿度によってウールはかなり動きます。パンツ丈で3cm程度伸びたりする事もあります) 日本製は過剰品質ともとれるほど 縫製に関しては至れり尽せりですが、オリジナリティの部分や ブランド(商品)のイメージを表現して ブランドを継続して育てていくのはヨーロッパ・アメリカ製と比較すると ポールスミスなどの一部のブランドを除き 残念ながらまだまだだと思います。

チェックポイント
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4. 海外製品(中国・東南アジア製)の価格は国内工場にとって、はっきり申しまして脅威的で 国内工場の存続を脅かせるほどでしたが、最近は中国などは 検品が緩く大量発注してくれるアメリカやEU向けの商品がメインだそうです。そのせいか 紳士服に関しては 中国から撤退して国内生産をするところが増えてきています。
ただ、バブル後おそらく30%位まで生産キャパシティが落ち込んでいますので、いざ作りたくても工場がない という状態になりつつあります。
弊社も正直言いましてかなり苦しい時代がありましたが どんなときも良い物を作り続けるというポリシーがご理解いただけたのでしょうか 最近はおかげさまでとても忙しい日々を送っております。

弊社でWEB販売している商品は、その品質と耐久性に関しまして、コストパフォーマンスと言う観点からはかなり高得点を付けることが出来ると自負しております。特に目を引くようなことは敢えてしておりませんが、永くお付き合いしていただけるのではないかと思います。また、あの値段ではどうせまともな商品ではない と思われるかも知れませんが、是非弊社製品をお試しいただきたいので、かなり無理な価格設定にしております。
最近はアパレル受注で工場が年中一杯なので 直販に関しましては最近はあまり宣伝もせず 半ば私の趣味といってもいいような感じですが たくさんの方にリピートオーダーいただいております。
リピートいただくということは 『合格』ということだと信じて それを励みに頑張っております。


あとがき

最近は色々な素材があって、それぞれの特性を生かして縫製するにはかなりの技術を必要とされるようになってきています。ただし、実際に商品を見てもその縫製の技術を見抜くのは、製造している立場の人以外には難しいかもしれません。

そこで、百聞は一見にしかず、デパートや高級専門店をじっくりと覗いてみてください。弊社で縫製しております紳士服の場合、高級ブランド品は値段もかなり高価ですが、意外とすっきりとした雰囲気の商品が多いのではないかと思います。
あっさりとしたさりげない印象の商品はとても作るのが難しいので、こういったものは良い縫製のものが多いです。また、素材に応じた補強が隠れたところにしてあったり、丁寧なつくりのものが多いです。こういったものを見つけられましたら縫い目の感じ(縫い代やミシン目)を良く見て下さい。一度その雰囲気をつかまれたら今後の商品選びの参考になると思います。
逆になんとなく硬い(粗雑な)印象がしたり、ごちゃごちゃした感じを受けるものは、あまり良くないものが多いです。ぱっと見た第一印象(直感)は、意外と的を射ていることが多々あります。
あとは試着してみて どういう物が自分に合うかそこをちゃんと把握されるとよいでしょう。

衣服は料理に例えることが出来ます。良い食材(生地・素材)をその特性を生かして優れた技術で調理(縫製)すると最高の料理(衣服)になります。これは一朝一夕に出来るものではなく、永年の努力と研究で初めて得ることが出来るものなのです。創業1947年(昭和25年)で半世紀以上の歴史のある弊社ならではの商品を是非お試しになってみてください。

これから少しずつですが、縫製工場にとって正統派のこだわりの品をアウトレットのラインアップに加えていきたいと思っています。
また 弊社製品をお買い上げ下さった方々には是非ご感想をお聞かせ願えれば幸いです。頂いたご意見は必ず今後の物作りの参考とさせて頂きます。



以上、縫製工場から見た良い商品の条件を簡単に書いてみました。いかがでしたでしょうか。おいおい少しずつ追加してまいりますが、ご質問等がございましたら、ゲストブックかメールにてご遠慮なくお尋ね下さい。わかる範囲でお答えいたします。

なお、このページはあくまでも担当渡邊の永年の経験による私感でございます。もし何か問題がございましたら訂正いたしますのでご連絡ください。また記載されている内容によって生じたトラブル・損害に対しては責任を負いかねますので、ご参考程度になさってください。



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